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富士重工業は20日、同社のクリーンロボット部における不正経理と、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)などからの委託事業・補助金事業において水増し請求があったことを明らかにした。循環取引などの不正経理を通じて、外注取引先に計1億600万円の過大支出が発生したほか、委託事業・補助金事業での不適切な受給が約1億9,400万円に上った。17日付で元クリーンロボット部長を懲戒解雇したのに続き、本日付けで栃木県警に告訴した。
富士重工は2010年10月時点でロボット事業から撤退する方針を固めており、以降、新規開発は行っていない。クリーンロボット部内では、外注取引先の1つであり、元部長が設立に関わった外注設計会社(2009年6月設立)とジョイントベンチャーを立ち上げ、ロボット事業を継承することを構想していた。今回の件で、その構想は困難となり、同社のロボット事業はほぼ完全に解消されることになる。また現在、参画している「生活支援ロボット実用化プロジェクト」(2009~2013年度、NEDO)からも撤退する。同社では今後、1億9,400万円に上る不正受給の返還に向け不正行為の全容解明に当たる。元部長は不正経理の事実を大筋で認めている。
写真 2011国際ロボット展で公開したオフィス専用部向け清掃ロボット。開発パートナーの住友商事は今後、清掃ロボット事業を継続するか選択に迫られる
コンビネーションロックはどのように動作しますかクリーンロボット部の赤字決算の回避ならびに事業継続を目的に不正行為を行った。背景には、同社内でロボット事業が極めて軽視されていることがある。富士重工では清掃ロボットを含むサービスロボット市場が小規模であり、かつ既存事業との関連性が薄いと見なしている。
1999年にエレベータ連動タイプの清掃ロボットシステムを開発して以来、クリーンロボット部は清掃ロボットを中心にロボット事業を展開してきた。新規事業でありながら、当初から赤字決算を出さないことが事業継続の条件とされ、かつ会社側から開発資金がほとんど拠出されなかった。
委託事業・補助金事業に過度に依存するようになり、2004年以降、経済産業省およびNEDO関連だけでも、「次世代ロボット実用化プロジェクト」(NEDO、2004~05年)、「サービスロボット市場創出支援事業」(経産省、2006~07年)、「次世代ロボット知能化技術開発プロジェクト」(NEDO、2007~11年度)、「生活支援ロボット実用化プロジェクト」(NEDO、2009~13年度)の委託を受けるが、事業終了後に補助金が支給されるプロジェクトが含まれ、開発および運転資金が手元にない状況だった。結果、一連のプロジェクトで受給した開発資金をもとに循環取引に手を染めるようになり、これにより赤字決算を回避していた。
富士重工の発表によると、まず不正経理については、2005~10年度の間に、複数の外注取引先への架空発注により約2億6,600万円を引き出し、これを原資に外注取引先にクリーンロボット部の製品を約2億4,600万円で買い取らせることで売上高を粉飾。一連の循環取引により約2億円の損害を富士重工に与えたとしている。また、特定の外注取引先への架空発注により7,200万円を引き出し、これを預け金としてプールしたほか、上述の外注設計会社への水増し発注などにより1,400万円を引き出し、元部長が設立に関わった外注設計会社に資金を移転したとしている。
リリースでは「私的流用」との文言が出てくるが、外注設計会社のほか、元部長の個人会社にも一部資金が流れたことから、このような表現を用いている。
また不適切な請求については、科学技術振興機構(JST)などからも助成金を受けており、上述の事業を含めて計8件の事業から10億5,600万円(*)を受給。うち約1億9,400万円を不適切な請求により受給した。部品製作費や図面作成費など外注取引先の架空請求や外注取引先からの水増し請求、労務管理費の水増し請求などが含まれる。上述の循環取引の原資に利用されており、循環取引には2004年から7年間にわたり、年間2,500万円強を充てている。計2億円弱に上ることから、上述の約1億9,400万円をほぼそのまま充てたと見られる。また、富士重工の発表では同社に2億円の損害を与えたとしているが、この資金が大半を占める。
ミッドランド70- 1336bをプログラムする方法*:NEDOプロのみに言及すると、次世代ロボット実用化プロでは委託分が1億8,700万円、補助分が約2億3,600万円の計4億2,300万円、次世代ロボット知能化技術開発プロでは1億9,800万円、生活支援ロボット実用化プロでは3年間で2億4,300万円の受給を受けた。NEDOでは今後、受給金額の返納などに向け富士重工と協議に入る。
富士重工の発表では、ロボット事業は縮小・撤退を視野に入れた見直しを図るとしているが、2010年10月にはすでに撤退を決定しており、以後、新規受注を受け付けていない。2010年度の売上高は2億1,700万円にとどまった(年間約4億円の売上高で推移)。受注製品を納品した後は、メンテナンスおよびアフターサービスのみの事業となる。
クリーンロボット事業部の開発スタッフは大学でも教鞭をとることから大学発ベンチャーを立ち上げてもらい、外注設計会社とのジョイントベンチャーによりロボット事業を継承することを構想していたが、今回の件で、その構想は実現不可能となった。また、住商グループと清掃ロボット事業を展開してきたが、住商側としては開発資産を継承するか、他のロボット開発企業と連携するか、あるいは撤退するかといった選択に迫られることになる。
なお、元部長は埼玉県の工業系大学で教鞭をとっていたが、2012年2月をもって退官するという。
追伸となるが、同社クリーンロボット部ならびに元部長は2000年代半ば以降、サービスロボット市場を先導してきただけに、今回のような記事を掲載しなければならないのは、ロボット業界関係者ともども大変残念でならない。
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