パトロールカー(patrol car)は、一般に警ら(受け持ち地区内をくるくるまわること)や巡回(決まった場所だけに警戒を兼ねて行くこと)と事故などへの出動を目的とした車両を指す。英語では、それに相当するものは一般にむしろpolice car(ポリスカー、警察車両)と呼んでいる。
本項目では、世界の警察におけるpolice carやパトロールカー について説明する。
[編集] 日本のパトカー
日本では主に、警察の治安維持活動、ライフラインを点検する為の水道局、ガス会社、電力会社、電話会社、鉄道会社、国土交通省、高速道路会社(旧日本道路公団等)の交通管理隊、また「青色防犯パトロール」と呼ばれる自主防犯活動に用いられる町内会(自治会)などで使用される車両や民間警備会社の車両などがある。防犯活動用など一部のもの(住民有志の自家用車であったり役所の公用車だったりする)を除き、特種用途自動車(8ナンバー車)である。
日本の警察におけるパトロールカーは、緊急自動車指定を受けた警察の車両であり、パトカーと略される。
パトロールカーは、大きく白黒パトカー(一般に見ることのできるパトカー)と覆面パトカーに大別される。
よく見かけるパトカーは、消防車や救急車と違い「機動警ら(地域警察)」という運用であり、警察本部・警察署などの庁舎で待機ではなく、常に街中にいて犯罪・事故の未然防止と110番通報時に現場へすばやく臨場をすることに備えている。また「交通警察(交通機動隊・高速道路交通警察隊・警察署交通課)」や「刑事警察(機動捜査隊・警察署刑事課)」でも街中で取締や警戒・捜査を行うだけではなく、街中から現場へすばやく臨場することもまた運用目的である。
[編集] 白黒パトカー
制服警察官が乗務するパトカーで警察署の地域課機動警ら係や、交通課、自動車警ら隊、高速隊などに配置され、正式には、交通取締用の車両を「交通取締用四輪車(交通取締用無線自動車)」、主にパトロール用の物を「無線警ら車(警ら用無線自動車)」という。つまり無線機を積載し、交通取締もしくは警ら活動を行う自動車である。先述の通り常に街中にいて指令(110番受理などによる急行や応援要請)を待っているわけだが、指令が入るまでは受け持ち地区内の警戒警らと職務質問などを担っている。これに分かるように警察官の足の替わりの為ではなく、街中から指令受理・警戒警ら・職務質問業務を受理し果たせるよう活用する一つの形態要式である。
これは警察において最も多い型のパトカーで、日本の警察では主に地域警察の警邏活動、交通警察の事故や違反の抑止、刑事警察における捜査・犯罪警戒活動において使用される。刑事捜査における尾行の際、被疑者への警察の存在を秘匿する(密行と称する)必要があるので覆面パトカーを使うが、それ以外の場合は、むしろ警察車両であることを前面に押し出しわかりやすく白黒パトカーで捜査や取締を行う。
車両のデザインについて、警察庁では「車体を白黒色に塗り上部及び前面に赤色警光灯と拡声器を備え、横部に都道府県名を表記する」という指針がある。1950年(昭和25年)に登場したパトロールカー(当時は移動警察車と呼ばれた)の塗装は白色一色であった。1955年(昭和30年)、当時ほとんどが白色一色であった一般車と区別するため[1]、米国のパトロールカーを参考にして、未舗装道路が多かった当時の道路事情を考慮して下半分を汚れの目立たない黒塗装のデザインにした。しかし細かな規定はなく、各都道府県警により塗り分け方や警光灯の形状などが微妙に異なっている。文字表記は道府県によって「○○県(府)警」(例・大阪府警)と「○○県(北海道)警察」(例・神奈川県警察)に分かれている。香川県警察では以前は「香川県警」だったが、近年導入された車両では「香川県警察」に変更されている。字体についても様々であるが石川県警のように明朝体からゴシック体に変更された地域もある。青森県警は、フロントドア下側に白抜きで白鳥のイラストが描かれている。大分県警は、以前はアメリカの車両のように赤色と青色の混合� ��警光灯を装備していた車両も存在したがこれは皇族警衛の際に使用された車両である。皇族警衛では地域を問わず車列先導を担当する白黒パトカーは、散光式警光灯の片側もしくは一部のカバーを青色に付け替えた車両を用いる慣習であるが、近年は赤色灯はそのままで着脱式流線型の青色警光灯を取り付けた車両が主流となった。また、2008年12月に福岡県で開催された日中韓首脳会議の警護の際は警護対象車を識別するため国ごとに異なる色の警光灯を装備していた[2]。
また、在日米軍が所有する一部のパトカーも青と赤混合の警光灯を装備した車両がある。また警視庁は2007年、外国人にもパトカー(ポリスカー)であると認識してもらえるように、また視認性向上などの理由で、黄色の反射材で作られた「POLICE」文字のステッカーを左右ドアと後部バンパーに、警察手帳に装填されている記章をデザイン化した、やはり反射材製のステッカーをドアに貼り付ける事を決めた[3]。
パトカーは警察の証として赤色警光灯やサイレンを装備しているのではなく、警光灯・サイレンは道路運送車両法に定められた緊急通行車両の緊急通行装備として取り付けてある。急行する際にパトカーが事故を起こすことにならないよう、視覚(警光灯の光)と聴覚(サイレンの音)で通行している他の車両や歩行者に急行中と認識させる注意喚起の装備品(警光灯・サイレン)である。
ほとんどのパトカーは、各自動車メーカーに「パトロールカー」「パトカー」というグレードが市販モデルと別に存在しており、一般車並みのカタログもある。このカタログは警察関係者以外は請求・閲覧できないが、独自のルートで入手するパトカーファンもいる。例えば、見た目はY31セドリックセダン3000ブロアムやクラウンセダンロイヤルサルーン3000と同じパトカーでも、3000ブロアムやロイヤルサルーン3000の市販車には存在しないマニュアルトランスミッションを装備し、ギア比を加速重視に変更、必要最小限の装備を残し徹底的に軽量化されているため、エンジン性能は同一でも中身は全く別物である。バッテリーを大容量化しているモデルもある。
なおパトカーは種類・用途により排気量・出力が異なっている(大きい順に「高速隊・交機パトカー(3500-2000cc)」・「警らパトカー(2500-1900cc)」・「ミニパトカー(1500-660cc)」)ため、隊を越えての車両異動(例:自ら隊から交機隊への車両異動など)は基本的になく、各隊毎に専用車両が新規発注されている。
また多くのパトロールカーには、屋根に所属警察署・隊名略号(コード)と号車数字が表記されており、警視庁や一部の警察本部ではフロントガラスにもこの表記がある(一例として警視庁丸の内警察署所属の1号車であればフロントガラスに「丸の内1」、屋根には「丸1」、本部302号車なら「302」、高速道路交通警察隊所属3号車なら「高速3」、屋根には「速3」など)。無線のコールサインを兼ねているため警察官は無線交信時、最初にその番号を名乗る事になっている。特に屋根上の表記は「対空表記」と呼ばれ、ヘリコプターを運用する航空隊員が地上の車両と無線交信をする際にコールサインを把握する目的がある。そのため警察ヘリと交信するための基幹系警察無線を基本的には車載していないミニパトなどの交通執行車両や交� ��・駐在所配備車両には対空表記がないものが多い。秘匿の用をなさなくなるため、覆面パトカーにも通常は表記されない。
[編集] 覆面パトカー
覆面パトカーは平時の外観は一般車両と同じ様相をしており、緊急走行開始時や対象者検挙時にのみ赤色灯を露出させサイレンを鳴らすパトカーの事。パトカーであると気づかれずに不審車両や不審人物への職務質問が出来るので、不審者を取り逃がす割合が低い。正式には取締りに用するものを「交通取締用四輪車(反転警光灯)」、要人警護に用するものを「警護車」、犯罪の捜査の用に供するものを捜査車両といい、総称してこの3種を覆面パトカーと呼び単に「覆面」や「覆面車」と略される時もある。但し捜査車両の中には緊急自動車指定(騒音走行認定)を受けておらず、着脱式赤色回転灯とサイレンを装備していない一般車両も存在する。また覆面パトに乗務する警察官は必ずしも警察の制服を着ているとは限らず、「私服 警察官」として一般人と同様にスーツを着てパトロールを行う場合もある[4]。
[編集] 交通取締用四輪車(反転警光灯)
交通取締用四輪車(反転警光灯)は、警護車同様に赤色警光灯が車内天井部に格納されており、緊急時にはルーフ中央部分が開いて小型の流線型赤色警光灯が外部にせり上がって来る(かつて180度反転して収納されていた構造から「反転式」と呼ばれるが、現行製品は格納スペースの中で横倒しになっており、蓋が開く動きに連動するアームによって外部に露出させる)。また、ごく初期の覆面パトカーは、回転灯が上昇・下降するのみで、反転はしなかった模様である[5]。
交通覆面パトカーは交通機動隊(交機隊)や高速道路交通警察隊(高速隊)、また警察署(所轄署)の交通課などに配備されて主に交通取締りを行なっている。交通機動隊など交通違反取締りを行う車両には、屋根中央部分から格納されている赤色灯がスイッチ操作により自動的にせり上がるようになっている。そのため、車内天井には反転灯を収納する場所の窪み(その形状から"洗面器"と呼ばれる事がある)がある。また、車内に乗っている警察官は原則として交通機動隊の青色制服または合皮製黒色制服を着用することになっているので、車内をよく観察すれば警察車両であると判別できる。例外として静岡県警のローレルクラブS(2台)や各地の暴走族(マル走)対策車両などには、捜査用車両と同様にマグネット式の赤色灯� �使うものが存在し、マル走対策などでは交通機動隊であっても私服で出動する場合もある。リアトレイに設置された電光表示板に「パトカーに続け」や「速度落とせ」などと表示される機能の付いた車両もある。
交通覆面パトカーは白黒パトカーと同じく、各自動車メーカーにグレードが存在する。しかし白黒パトカーに比べて需要台数が少ないために車種も少なく、現在はトヨタクラウンのみカタログモデルとして設定されている。しかし白黒での記述にあるように県警単位で購入したり、警察庁が直接入札するケース、寄贈されるケースが主流となっているため、普通車仕様の覆面パトカーも多数存在する。バブル期には貿易黒字を減少するために、国費でメルセデス・ベンツ300EやBMWが購入され、主要県警に配備されたが、目標車を追尾していても非常に目立ち、また、あたかも暴力団(マル暴)のような様相であると不評であったために新たな配備はなく、現在その数は全国で10台未満になっている。なお、現在、警視庁では一部のメルセデ� ��・ベンツ300Eが交通機動隊から警備部警護課に移管され、予備の警護車となっている。
輸入車覆面が配備された都道府県警
[編集] 警護車
警護車は、主に内閣総理大臣を初めとする閣僚や官公庁の上官、都道府県知事など国内外の要人警護を目的に使用され、ベース車にはトヨタ・センチュリー、トヨタ・セルシオ、トヨタ・クラウンマジェスタ、日産フーガ、日産・ティアナ、ホンダ・レジェンド、三菱・デボネア、スバル・レガシィB4(BM9)などの国産の高級車が採用される場合が多い。また、トヨタ・ランドクルーザープラド、トヨタ・ハイラックスサーフ、、スバル・レガシィアウトバックなどのSUVをベースとし、警護の車列には直接加わらない遊撃警護車も配備されている。
交通取締用四輪車同様に、赤色警光灯が車内天井部に格納されており、ルーフ中央部分が開いて小型の流線型赤色警光灯が外部にせりあがってくる。前面赤色警光灯は、フロントグリルの中に取り付けられているのが一般であるが、近年は全国的に視認性を高める目的でLEDの前面赤色警光灯を装備する志向にある。また、セルシオなど4000ccクラスの車両の中には防弾ガラス仕様も存在する。
警護車は各都道府県警の警備部に配備され、私服(多くは背広にネクタイ)のセキュリティポリス(SP)が乗務する。
警護車を使った警備については、警護車を1台ないしは2台利用して車列をつくり(車列警護)、警護対象者の乗る対象車(一般の普通乗用車)の前で先導するか、対象車の後から追尾するスタイルが一般的である。
なお、この場合では警護車は緊急自動車とならず、車列の走行に障害となる一般の交通を一時停止させるため、乗務するSPが、警護車から身を乗り出し(暴走族の行う"ハコ乗り"と同一)、誘導灯を振るなどして一般車などを排除しながら走行する。
警護車の例
[編集] 捜査車両
捜査車両は機動捜査隊、警察署(所轄署)の刑事課や生活安全課、交通課などに配備され、私服の刑事警察官が乗務する。国費購入の場合には機動捜査用車、私服用セダン型無線車、私服用ワゴン型無線車などとカテゴリーが分けられて入札により調達されるが、時には数百台単位での台数となる。白黒パトカーと比較すると改造箇所が少なく、近年市場人気が下落傾向のセダン型車を多く販売できるため、メーカーやディーラーはマイナーチェンジやフルモデルチェンジ直前のモデルや、不人気モデルであるとかなり安値で入札することがある。調達する警察側としては結果的に一番安いときに大量購入することになることが多い。近年ではセダン型の自動車が市場でも人気が落ち、ステーションワゴンやミニバンタイプの乗用車が販� ��台数を飛躍的に伸ばしているため、捜査上秘匿性を重要視する覆面パトカーにとっては、セダン型ではかえって目立ってしまう事態もあり得るため、ステーションワゴン型やミニバン型の車種を導入することが多くなってきた。
私服用ステーションワゴン型無線車、私服用ワゴン型無線車、私服用ワゴン型車などとカテゴリー分けされ、いずれも2000cc級や2400cc級などと排気量によっても分別している。また、狭い道路での活動(被疑車両の追尾など)などでは排気量が小さめな車種も必要とされることから、1500cc級のセダン型やステーションワゴン型が調達されることもある。刑事ドラマやサスペンス系の2時間ドラマによく登場するタイプのもので、緊急時にはマグネット吸着式の流線形赤色警光灯をルーフに付けて走行する。また、高速時の脱落を防止する為に、ルーフ中央には、ボルト固定しているピンを装備する場合があるが、外見から固定用ピンが目立つので、車両によっては取り外し、ネジ等で穴を塞いでいる場合もある。 神奈川県警刑事部では視認性をより高めるために赤色灯を左右2個取り付けるという独自の指針を出している。ただし必ずしも捜査車両=覆面パトカーではなく、特に地方の所轄警察署などでは緊急走行のための装備を持たない車両が多く、以前は1500ccクラスのセダン型が多く見られた。ナンバーを外部に知られると用をなさなくなるので、必要に応じてレンタカーを借りたり、捜査員などの私有車(マイカー)を使うようなケースもある。場合によっては、地域課や鑑識などが覆面車を使用する事もある。また、一部の県警では所有者がリース会社名義の捜査車両もある。
捜査車両の中でも警察署長や警察本部の幹部クラスが乗務する車両を指揮用車という。事件や事故で臨場することはあるが、普段は幹部の移動用として用いられ、警らに用いられることはない。
現在使用されている国費導入された主な捜査車両
かつて使用されていた主な捜査車両
また、最近では大人数の人間を乗せたり優れた積載性、居住性が必要となる場合のためにミニバン型の捜査車両も増えており貨物車、SUVが採用されているケースもある。